渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催中の「ミロ展ー日本を夢見て」の内覧会に行ってきました。
実はバルセロナのモンジュイックにあるミロ美術館にも行ったことがあるのですが、解説がほとんどなかったので、かわいいキャラクターっぽい作品のTシャツとボールペンだけ購入して、ミロと日本の関係はおろか、ミロの人生に思いを馳せることもなく、終わってしまったという過去があります。そこで、こちらの展覧会でミロのことを知りたい!と思い、参加させていただきました。
何よりとってもありがたかったのが、基本的に、制作年数の古い順から作品を展示してくださっている点。ミロの作風が徐々に変化していく様子がよくわかるので、初めてミロの作品を見る方にもおすすめです。
*本展主催者の許可を得て撮影をしています。
開催概要
会場:Bunkamuraザ・ミュージアム
会期:2022/2/11(金・祝)~4/17(日)
※2/15(火)、3/22(火)は休館
開館時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
*事前日時予約制
新型コロナウイルスの状況によって開館時間等の変更が予想されますので、事前にご確認を。
展覧会の構成
I 日本好きのミロ
II 画家ミロの歩み
III 描くことと書くこと
IV 日本を夢みて
V 二度の来日
VI ミロのなかの日本
[blogcard url="https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_miro/"]
ミロに日本を伝えてくれた友人リカル
会場に足を踏み入れて、最初に向き合う作品が、《アンリク・クリスロフル・リカルの肖像》(1917冬-初春、ニューヨーク近代美術館)です。
私の知っていたミロは抽象画ばかりだったので、ちょっとゴッホっぽい黄色の肖像画の作品があるなんて意外でした。
この肖像画に描かれたリカルはミロの友人で、親日家で、浮世絵などを集めていた方だそうです。
現在は、ミロが最初に日本に触れたのは、リカルの影響ではないか、と言われてるそうです。
しかも背景に、浮世絵をそのまま貼っています。「写したんじゃないよね!?」と何度も見つめてしまいました。
そして、驚いたことに、肖像画の中の浮世絵と全く同じ絵が描かれた《ちりめん絵》が!!よく見つけましたね。すごい。
このちりめん絵というもの自体も知らなかったので、二度びっくりしました。フランスでは、クレポンと呼ばれ、あのゴッホも持っていたそうです。
横浜美術館・富山県美術館・愛知県美術館の3館、吉野石膏コレクションから選りすぐりのミロが集合!
すでに伝説となっている、2020年開催のトライアローグ展でタッグを組んでいたあの3館所蔵のミロの作品も多いです。
また、三菱一号館美術館で2019-2020年に開催された「印象派からその先へ ― 世界に誇る吉野石膏コレクション展」で出会ったミロの作品とも再会できます。
▼左は横浜美術館所蔵の《花と蝶》(1922-23)、右は株式会社フジ・メディア・ホールディングスの《赤い扇》
▼富山県美術館所蔵の《絵画(パイプを吸う男)》(1925)
▼左が吉野石膏コレクション(山形美術館寄託)《シウラナ村》(1917夏)
コロナ禍で見られた展覧会は貴重だったので、覚えてらっしゃる作品も多いのではないでしょうか。
日本の美術館所有のミロ作品の多さ、多彩さを認識できました。ミロが日本を好きなだけでなく、日本の美術館やコレクターもミロのことが好きなのでしょうね。
スペイン内戦へのやるせない気持ちが現れた作品も
明らかに他の作品と違って、暗いなあと感じた作品。
1936年から1939年に、第二共和政期のスペインで発生した内戦に影響された作品だそうです。
どちらもコラージュですが、キャンバスに穴が空いていたり、キャンバスを紐で縛っていたり、激しい作品でした。
▼左《絵画》(1936年夏)、右《絵画(絵画=コラージュ)》(1936年10月29日)
ミロと民藝
今回、展覧会を担当された吉川貴子学芸員(Bunkamuraザ・ミュージアム)のお話を伺うことができたのですが、日本の禅や書画から影響を受けたと思われる作品のひとつとして、《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》(1945年5月26日)を紹介してくださいました。スペイン内戦から第二次世界大戦にかけて、マジョルカ島に逃げていたミロが描いた作品だそうです。まず、この黒い背景自体が、西洋絵画にはほとんどないそうです。また、日本の書画のように、真ん中に黒く筆で描かれている抽象画。お話を伺うことがなかったら、何も気づきませんでした。ミロっぽい、不思議なキャラクターの登場する抽象画にしか見えなかったので。
▼ミロと民藝の関係を表したコーナーには、柳宗悦とも交流があったというジョゼップ・リュレンス・イ・アルティガスと一緒に制作した《大壺》(1966)を始めとする陶芸作品やバルセロナで所蔵されている大津絵やこけしも一緒に展示されていました。この展示風景だけ見ると、まさかミロが関わっていた作品が一緒に展示されているようには見えませんね。
ミロと瀧口修造
ミロの絵に、詩人で美術通評論家の瀧口修造が詩を載せている作品を見たことは何度かありましたが、まさか一緒に制作するほど親しかったなんて、全く知りませんでした。
瀧口修造が、ミロについての本を日本語で発刊していることを知り、日本に憧れていたミロは感動したそうで、来日時に実際に会っているそうです。
▼瀧口修造とミロの共同作《手づくり諺ージョアン・ミロに》(1970)で、日本語、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、カスティーリャ語、カタルーニャ語の各言語に呼応するように制作されたそうです。
▼手前の黄色いボードに展示してある、富山県美術館所蔵の《無題》(1966)は、ミロが瀧口修造に贈ったドローイング作品で、二人の交流が始まった年に制作されたようです。クレヨンで描かれていて、優しい雰囲気を感じる作品でした。
書画にしか見えない作品も!
▼それも《絵画》(1973年頃)という3作品は、禅僧が描いた書画にしか見えませんでした。こんな作品も描いていたんですね。
マジョルカ島のミロのアトリエに「たわし」!?
今回特別に、マジョルカ島にあるというミロのアトリエにあったという日本の民芸、道具一式も来日しています(ピラール&ジュアン・ミロ財団、マジョルカ)。
その中になんと、「たわし」が!十亀たわしという、日本のたわしがありました。
実はミロは、たわしを使用して、1970年の大阪万博で、大阪ガス主催のガスパビリオンに巨大壁画を描いたそうで、作品の一部は、今でも大阪ガスが所蔵しているそうです。マジョルカ島のアトリエでも、絵を描く時に使用したことがあったのかもしれませんね。
テレビや動画でもミロに触れられる機会が!
すでに放送は終わってしまいましたが、テレビ東京「新美の巨人たち」では、落語家で美大卒で、美大で教授もされてる林家たい平さんがこちらのミロ展を紹介してくださっていました(見逃し配信もあるそう)。ディレクターさんによるエッセイはいつでも読めますので、こちらからどうぞ。林家たい平さんは子供の頃からミロが大好きとのことで、ミロ愛に溢れていました。
[blogcard url="https://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/backnumber/index.html?trgt=20220312"]
ミロのお孫さんの特別インタビューまで!
[blogcard url="https://www.youtube.com/watch?v=EqCyK021VWU"]
まだ知的財産権の問題で撮影が難しいミロの作品が3月中の平日限定で一部撮影ができる!
これはもう出血大サービスですね!
混雑していないと予想される3月の平日のみ、一部の作品が撮影可能だそうです。
なかなかない機会だと思いますので、ミロファンは有給使ってでも駆けつけていただきたいです!!
[blogcard url="https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_miro/topics/5917.html"]
コロナ禍でも日本に貴重な作品を貸し出してくださったミロのご遺族やニューヨーク近代美術館等に感謝!
最初は、コロナ禍で海外の作品の貸し出しは難しいので、国内にあるミロの作品を集めた展覧会だとばかり思い込んでいました。
ところが実際は、ミロのご遺族のご協力ではるばるスペインからの作品や日本の民芸品やたわしまで里帰り。
ミロと日本のつながりが強かったとはいえ、このような状況でも日本で海外の作品や作家の遺留品を見ることができることに感謝です。
▼ミロのマジョルカ島のアトリエの外観なども掲載されていた東京新聞の記事
[blogcard url="https://www.tokyo-np.co.jp/article/161532"]
お土産はミロ!?
本当に驚いたのですが、スポンサーのネスレ日本さんが、鑑賞者全員に「ミロ(MILO)」が。
このダジャレ、日本でだけしか通用しないですね。ミロご本人が見たら、首をかしげるかも。
でも、ミロは美味しくて大好きなので、いただけて、嬉しかったです!